意味・定義・単位の解説

【供託金の還付・没収基準の解説】

公職選挙(衆議院・参議院・知事選)の供託金没収基準・不動産営業保証金(宅検)・不動産競売の供託金について入門者向きにわかりやすく解説しております。

◆供託金の還付・没収基準の解説(もくじ)

◆公職選挙の供託金とは?

 選挙における供託金とはいったい幾らで、この供託金にはどのような意味があるのでしょうか?

 まず選挙における供託金とは、「公職選挙の立候補者」「選挙管理委員会」に預ける金銭のことを表します。

 尚、この供託金に関しては金銭の他に「国債」による預託も認められる事になっております。

 しかしこの供託金はいったいなぜ預託しなくてはいけないのでしょうか?

 この供託金制度の狙いは以下にあげられます。

★売名行為の防止
★選挙妨害の禁止
★覚悟の証

 供託金制度導入の起因は以上のような狙い、目的があったと考えられております。

◆供託金が還付されるケースと没収されるケース

 選挙の際に必要となる供託金には幾つかの規定が定められております。

 まず、供託金の納入方法に関しては「日本国通貨」「国債証書現金」の2つのみが有効です。

 ですから外貨建ての貨幣などは一切認められません。

 次に預けた供託金の返還に関しては一定ラインを超えるか超えないか?という線引で没収になるのか?それとも返還されるのかが決まります。

★規定数以上の得票があれば ⇒ 全額還付
★得票数が規定数に達しなかった場合 ⇒ 全額没収

 この没収規定を設けることで、単純に売名行為に出る候補者を抑制する効果があるとされています。

 尚、肝心の供託金の金額は各選挙方法によって異なる金額が設定されております。

◆日本の公職選挙における供託金の金額表

 供託金の金額は各選挙によって詳細に預託額が設定されております。

 1925年の普通選挙法の導入に伴い公職選挙ではじめて供託金制度が導入されて以来、この金額は一部引き上げられましたが基本的に大きな変化はありません。

 以下、説明よりもわかりやすいと思いますので簡潔に表にまとめましたのでご参照ください。

【公職選挙における供託金】
区分供託金預託額
衆議院小選挙区300万円
衆議院比例代表600万円
参議院選挙区300万円
参議院比例代表600万円
都道府県知事300万円
都道府県議会議員60万円
指定都市の長240万円
指定都市の議会の議員50万円
指定都市以外の市の長100万円
指定都市以外の市の議会の議員30万円
町村長50万円
町村の議会の議員供託金必要無し

◆公職選挙における供託金の還付・没収基準

 日本の公職選挙における供託金の没収に関する基準も明確に定められております。

 この基準以下の得票数しか得られない候補者は、供託金を全額没収されます。

 尚、没収された供託金は、「国庫」「地方自治体」に帰属する事となっております。

 但し、選挙中に候補者が亡くなるなどの事態が生じた場合は、得票数に関係なく全額返金されます。

 以下、供託金の没収基準について簡潔にまとめましたのでご参照ください。

【公職選挙における供託金の還付・没収基準】
区分供託金預託額
衆議院小選挙区有効得票総数÷10
衆議院比例代表当選者の2倍を超える人数分
参議院選挙区有効得票総数÷議員定数÷8
参議院比例代表当選者の2倍を超える人数分
都道府県知事有効得票総数÷10
都道府県議会議員有効得票総数÷議員定数÷10
指定都市の長有効得票総数÷10
指定都市の議会の議員有効得票総数÷議員定数÷10
指定都市以外の市の長有効得票総数÷10
指定都市以外の市の議会の議員有効得票総数÷議員定数÷10
町村長有効得票総数÷10
町村の議会の議員供託金がそもそもないので無し

◆日本と世界の供託金の違い

 日本の公職選挙法が定める供託金の額は海外に比べるととても高い基準となっていることはご存知でしょうか?

 公職選挙における供託金の金額表を見ても解る通り日本では衆議院・参議院ともに選挙に立候補しようとすると最低でも300万円の供託金を納めなくてはいけません。

 ではここで参考までに海外の選挙における供託金を確認してみましょう。

★イギリス ⇒ 約9万円
★カナダ ⇒ 約7万円
★シンガポール ⇒ 約3万5千円

 こうして見るとあまりにも供託金の水準が違うことに驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。

 尚、日本同様に基準が比較的高めの国としては「韓国 ⇒ 約150万円」「マレーシア ⇒ 約90万円」がありますが、やはり日本とは比較にはなりません。

 尚、フランスやイタリアでは、そもそも供託金自体が必要ありません。(フランスでは2万円供託金が差別問題として問題視され廃止された経緯があります)

 これは、「開かれた政治を行うには供託金制度があると差別となる」という見解が浸透している為です。

公職選挙の供託金は必要?(図)

 実際、日本における供託金制度の効力は、資産家が度々選挙に出場するなど「売名行為」「余興・暇つぶし」程度に見られてしまうような選挙出馬も多々あり、逆に本当に能力を持つ人材の出馬が断念せざるおえない状況を作っているという批判の声も多くあるのです。

◆不動産営業保証金の供託方法

 供託金は選挙以外にも幾つかの供託金があります。中でも不動産業を営む為の供託金は有名です。

 不動産の供託として預託される供託金は「営業保証金」として扱われ宅地建物取引業を営もうとする者が供託所に所定の金額を事前に収め、不動産取引の安全性を図る目的で供託されます。

 尚、選挙の供託金同様、証券による預託が認められておりますが、不動産の供託金の場合は「金銭」「有価証券」「金銭と有価証券の併用」での預託が可能となっております。

 但し有価証券に関しては記載された満額の金額が評価されることはなく、実際の評価額は以下の割合が供託金として認められる範囲となります。

【供託金として認められる有価証券の割合】
★国債証券の場合 ⇒ 100%
★地方債証券・政府保証債証券の場合 ⇒ 90%
★その他省令でさだめる有価証券の場合 ⇒ 80%

 政府保証債証券とは、元本の償還と利子の支払いを政府が保証している債券のことです。

 また「その他省令で定める有価証券」には手形、小切手、一般株式は含まれておりません。

◆不動産競売の供託金は2割

 不動産営業保証金の供託に続いて不動産関係の豆知識としてここでは不動産競売に関わる供託金に関する基礎知識についてもチェックしておきましょう。

 不動産競売を既に行った経験がある方はご存知かと思いますが、競売の入札では入札を行う際に供託金を納付する事が義務付けられております。

 不動産競売では、入札期限内に裁判所に行き、最低入札価格以上の入札希望額を記載し入札を行わなければいけません。

 尚、不動産競売における供託金の額は自分が入札した金額の2割、入札額の20%を供託金として預託しなければ競売に参加することができません。

不動産競売の供託金(図)

 例えば解りやすい例で言えば最低入札価格が1000万円の物件の競売に参加する場合は、最低でも200万円の供託金を預託する必要があるということです。

 尚、不動産競売では自分が落札できなかった場合は、供託金全額が返金されます。

◆供託金の返還方法

 預託している供託金の返還はどのような手続きで行えば良いのでしょうか?

 供託金の返還方法に関しては、管轄の供託官へ「払渡請求」を行わなくてはいけません。

 還付の申請書類としては「供託金払渡請求書」に内容を記載して提出する事になります。

 この際、供託官は「請求が適法であるかどうか」を審査し適法と認定された場合は払渡請求が認可されることになります。